児島節子は貧しい暮らしの中でも歌が好きで、歌手になるという夢が捨てきれなかった。ある夜、家を飛び出し東京へと向かった。汽車の中で節子はイラストレーターを夢見て上京するという伊東茂と知り合った。お互いの成功を祈りまた逢う日を約束して別れた。茂は節子のギターに、詩とイラストを書いて贈った。節子は、やはり歌手になろうと上京していた同郷の邦子のマンションを尋ねた。邦子は都会の生活と歌謡界の裏の汚なさに押し潰され、今はクラブのホステスをしていた。節子は美容院に住み込みで働きながら歌謡学院へ通うことになった。その頃、茂はイラストを雑誌社に売込みに廻っていたが、固い絵柄では相手にされず、ポルノ度を高くすれば売れるのではないかと、ヌード・スタジオに入る。スタジオで誤ってヌードモデルに火傷を負わせてしまった茂は、ヤクザの中井に脅され、スケコマシの一味にさせられてしまった。節子と歌謡学院で一緒だった純子はマネージャーに躰を与え、プロとして活躍するようになった。純子の薦めで節子は彼女の付き人となる。ある日マネジャーは、茂が節子のギターに書いた詩に目をつけ、「怨歌情死考」として純子に歌わせると大ヒットとなった。いたたまれなくなった節子は、一人で夜の舗道を彷徨った。その時、茂の乗った車が止まった。再会を喜ぶ二人は茂のマンションへ。スケコマシになっていると知らない節子は、彼が成功したものと信じた。そして自分も歌手で活躍していると嘘をつくのだった。二人の純粋さを都会と芸能の闇がからめとり、奈落へと引きずりこもうとしていた。
TM-HPBN-88|にっかつ|72min|DVD|2018-06-02|中古:999円(税込)|